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2011年3月9日水曜日

「TPP開国論」を糾す


「詩をきっかけとして考える会」でも過去に取り上げた経済評論家 内橋克人氏が下記のメッセージを発信しています。
予てより、民主党も自民党も一つ穴の狢だと考えて来ましたが、小生の持論、この国では『政治に関与しているのは、専ら人間として、最低レベルの人々である』が更に鮮明となっている、ことは取りも直さず、それを選択し、放置している我々のレベルが問われていることになりますが…(J)。


「TPP開国論」を糾す
    「開国」とは「国を開く」と書く。「鎖国」を解いて国を開けば、
生き生きとした政治・経済社会が蘇る、あの幕末・維新のときのように、と「TPP開国論」が突如、この国に燃え上がった。菅首相、日本経団連、東京発マスコミなどが合唱する。ほんとうか。
   現代日本は鎖国ではない。
高い関税障壁で国内産業を守る保護主義国ではない。全品目の関税率はアメリカより低い。生存権の基本、穀物さえ、愚かにも、すでに7割以上も明け渡している。飼料用穀物は全量、大豆96%、小麦86%・・・。過剰なまでにアメリカほか数カ国に「開国」した。残るはただコメのみである。先進国の中にそんな国はない。
   だから外交力に脆く国際社会での存在感も希薄となる。「鎖国」
のゆえに影が薄くなったわけではない。時代の閉塞感は別のところから来る。
    TPPに入れば、経済は活力を取り戻せるのか。
新たな輸出市場が待っているのか。そんなことはない。成長アジアというが、TPP加盟・同予定国の国内総生産はアメリカと日本で90%以上になる。むろんのこと、日本からの輸出増大の可能性は相手国の「内需」(国内市場)
の力による。成長著しいアジアとはいえ、
TPPに名を連ねる日米豪以外の国々の内需はいまだ全体のコンマ以下にとどまる。アメリカ、日本で96%。3位オーストラリアでさえ3.7%に過ぎない。日本経済を活性化するに足るほどの輸出市場など
(TPP加盟・予定国の) どこに待っているのか。
   過去、アメリカ除外のアジア圏構想はことごとく潰された。
1997年アジア通貨危機に際して唱えた宮沢構想 (「アジア通貨基金構想」)
にアメリカは激怒し、構想は霧の如くかき消された。
アメリカを加えない「ASEAN3」も「ASEAN6」もアメリカにとっては不快この上もない構想だ。アメリカにとって「アメリカ主導のアジア」を形成するには「TPP」のほかにない。
   菅首相は当初「第三の開国」と唱え、その後、もっぱら「
平成の開国」と叫ぶ。その「おかしさ」について新聞、ラジオ、講演など機会あるごとに指摘してきた。光り輝く「第一の開国」幻想のなかに菅氏は夢遊している、と。はからずも今回対談の冒頭で宇沢弘文氏は明解にえぐり出された。関税自主権を奪われ、治外法権を呑み、輸出入交易の役務・金融の全てを列強資本に独り占めされた、片務的、隷従的、不平等条約であった。近代日本の苦悶は以後、60数年も続いた。加えて菅氏のいう「第二の開国」が第二次大戦の敗戦時を指す、とは!
対談の冒頭、宇沢氏は絶句された。
   いま「開国」とは「国を開く」ことではない。「国を明け渡す」
に等しい。「城を明け渡す」とは「落城」である。
   各地でTPP反対の県民集会が続いている。
当メッセージを書いている私は、昨夜
(2011/3/5)、岩手・盛岡から帰宅したばかりだ。
生活協同組合から地場の中小事業者まで48団体、760人を超える市民が岩手教育会館大ホールを埋めた。「岩手県民会議」を立ち上げ、「TPP反対」を決議した。一日おいて明日は新潟に行く
(3/7)。同様の県民フォーラムが開かれる。東京、京都、
北海道その他、どの会場も「市民」(農業従事者だけではない-の意)で溢れる。会場に入りきらない。各種協同組合が連携して「TPP反対
1000万人署名運動」を進めている。
政権がTPP加盟の是非を決めるとする6月に向けて、さらに加速するだろう。「農業過保護」を言い立て、農業と他産業の利害を分断し、対立させる-目論みは崩れつつある。
   誰のものでもない、この社会に生きゆく人びと全てのもの。
すなわち宇沢経済学『社会的共通資本』の概念がいま攻撃にさらされている。本誌での対談に込められた危機感は対論者だけのものではない。この国に生きる人びと、生産者から消費者まで、すなわち生きる、働く、暮らす、すべての人びとが深く共有するところとなってきた。その現実を、私はどこへ行っても実感する。短期間に、急速に、激しく、そして厳しく・・・。
   2011年3月6日 記す
   内橋克人 (経済評論家) http://www.iwanami.co.jp/sekai/2011/04/081msg.html 

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